スローフード物語 vol.10

「鰊切込」

鰊切込イメージ

瓶に入れて気長に……。塩角がとれて、味がまあるくなるまで。
鰊切込は、鰊漁で一旗を夢見て新天地にやってきた本州からの移住者が、
ハタハタと米糀を使う秋田のしょっつるの製法を鰊で応用したものと考えられます。

北前船

イメージ江戸時代中期から明治時代中期までの約150年間、蝦夷地と大阪を結ぶ西廻り航路(日本海航路)を行き来した交易船を北前船とよんでいました。
蝦夷地の干鮭、昆布、にしんなどの海産物を上方へ運んだルートを「上り荷」、上方から、塩、砂糖、米、反物などを積んで蝦夷地に向かったものを「下り荷」とよんでいました。

西廻り航路が拓かれる前の江戸時代初期まで、北陸や東北の産物を、敦賀か若狭小浜に陸揚げされ、琵琶湖航路で京都や大阪に運ばれていましたが、荷物の積み替えなどの手間から蝦夷地と大阪を結ぶ西廻り航路が拓かれるようになりました。
米を千石積める船を千石船と呼んでいましたが、今の単位に換算すると約150トン分もの荷物です。
また江戸時代後期に作られた弁財船は、従来のものより船底なども頑丈で、逆風帆走力が高く、櫓や櫂を使用しないので、船員の数も少なく済み、500石船で6~7人前後、1000石船で10人前後とそれまでの船より半数ほどになりました。
北前船の隻数については、確かな記録は残っていませんが、江戸時代後期には、500石以上の大型廻船は1500~1600隻ほどの船が就航していたと言われています。

3月下旬~4月上旬にかけ、大阪港を出航し、瀬戸内海から日本海の各々の港で商いをしながら蝦夷地に到着します。
江差、松前、箱館で積み荷を売りさばき、6月、干鮭、昆布、にしんなどを仕入れて7~8月頃蝦夷地を出航し、晩秋の頃に大阪へ帰港します。つまり当初は1年1航海で行われていました。
蝦夷地からの「上り荷」はとくに高値で、千石船一航海の利益は千両といわれ、その70%は「上り荷」によってもたらされたもので、現在の貨幣価値に換算すると1億円に相当する額だといわれています。

にしんは魚肥だった

中でもにしんは、食料としてより、85%は、四国や近畿地方の綿花地帯に魚肥として運ばれていました。
当時、庶民の衣服は麻製でしたが、肌触りや保温性の点で優れ、木綿へと需要が拡大し、それまでの下総、安房など千葉のイワシ粕が値上がりしたため、にしん粕が使われるようになり、蝦夷地のにしん粕は、本州の産業の発展に大きな役割を果たし、また蝦夷地の開拓にも大きくかかわりました。このように北前船は、蝦夷地の産業や社会構造を一変させました。
しかし、この明治30年代になると、北前船の華やかな時代は終焉をむかえました。ひとつは、汽船や汽車という新しい動力の輸送手段が台頭していたこと。もうひとつはにしんの資源が減少してきたことがあげられます。

にしんが日本の産業の発展に大きな貢献をしましたが、にしんほど様々な料理がつくられた魚は他にないでしょう。

鰊(にしん)切込のルーツは魚醤

イメージ現在醤油のほとんどは、麦や大豆などの穀物でつくられたものが大半でしたが、にしん漁で賑わった時代の北海道では、入手困難な穀物醤油より、魚を原料にしたほうがはるかに身近なものだったようです。『鰊切込』は、この魚醤づくりをにしんで応用し、その過程の中で、ほどよい旨さになったときを身はからって食べる食品といえるでしょう。

日本の魚醤は、東南アジアから伝わったとされ、石川県の「いしる」や、香川県のイカナゴを使った「いかなご醤油」、秋田県のハタハタを使った「しょっつる=塩魚汁」がありますが、ハタハタと米麹を使う「しょっつる」がルーツと考えられます。

『鰊切込』はこの魚醤づくりをにしんで応用したものですが、その過程の中で、ほどよい旨さになったときを見はからって食べられてきた北海道生まれ、北海道育ちの珍味です。

今も開拓当時と変わらぬ味

現在、鰊切込のほとんどは、発酵熟成を早めるため、室温を上げて人為的に即席でつくられているのが現状です。
弊社の「鰊切込」は、今から40数年前、石狩に暮らす通称「金谷のばあちゃん」という鰊の切込づくりの名人に伝授されたものです。弊社の創業者故佐藤三男が石狩開拓の頃からの味を守り続けてきた、金谷のばあちゃんから手ほどきを受けた直伝の製法です。これに若干の改良を加え、二ヶ月以上じっくり寝かせ、当時の味を忠実に再現しています。熱々ごはんのおかずや酒の肴におすすめの一品です。

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鰊切込

名人直伝の製法を守り、じっくり熟成させた昔ながらのおいしさ。

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